こころゆるめる日々のヨーガ〜呼吸のこと その3 カラダ・骨・筋肉
わたしたちは呼吸をしているから、生きています。
呼吸すると聞いた時、わたしたちのカラダの、どこで呼吸していると思いますか? 感じますか?
鼻、喉、気管、肺、胸、深い穏やかな呼吸だったらお腹・・・そんなイメージでしょうか?
今日は、わたしたちのカラダを通して、呼吸のお話をしましょう。
・呼吸のメカニズム
「吸って・・・吐いて・・・」そんな呼吸のガイドを、ヨーガのレッスンで耳にする機会も多いですよね。
さて、吸う息としてカラダの中に入った空気は、わたしたちのカラダの中でどのように流れていくのでしょうか?
鼻から息を吸ったら、鼻の先から鼻腔を通って鼻の奥へ
この鼻腔を通っている間に、鼻の中の毛や粘膜によって、カラダの外からやってきた空気に含まれる埃や、カラダの中に入ってほしくない微粒子を捉えます。
そして鼻の奥を通りながら、ひんやりした空気は、適度な湿り気を帯び、カラダが受け取りやすい体温ほどの温度に温められます。
こうしてカラダの中に迎え入れられた空気は、喉、気管を通って、肺へ。
肺の中には、様々な動静脈が張り巡らされているし、神経も出入りしていますが、ここでは気道の先・・・気管支に視点を向けていきます。
肺の中に入った空気は、気管支へと流れこみます。そして先端へ向かって、どんどん細く小さくなっていく気管支を通り、先端にある肺胞へと辿り着きます。
この肺胞は、丸い球体で、その周囲は毛細血管が包み込んでいます。ここで空気は酸素と二酸化炭素に分けられ、酸素は各動脈を通って血液に乗って心臓へ。
そして心臓から血液と共に全身へ送り出され、わたしたちのカラダを構成する細胞一つ一つへ、エネルギーとなる酸素が届けられます。
頭の先から両手の指先、両足の指先まで、血液に乗って、酸素は全身を巡っていきます。
なが~い道のりですね・・・そして、わたしたちのカラダってすごく働きものですね。
・呼吸を司るカラダ~骨のはなし~
呼吸には、呼吸筋群と呼ばれる複数の筋肉と、筋肉によって動かされる骨格が関係します。
わたしたちが手で触れることができる骨格=骨。
そのうち呼吸に関係する主な骨は、胸の真ん中の固い骨「胸骨」と、左右の肋骨、そしてその肋骨と繋がっている背骨の部分『胸椎』です。
これらの骨(とその骨に付いている筋肉や筋膜)は、肺を守るように取り囲む籠のようになっていて、
胸郭」と呼ばれます。
呼吸をすると聞くと、肺を膨らませたり、萎ませたりするんだろうなぁと考えますよね。
実は、肺はそれ自体で動いて、膨らんだり、萎んだりしていません。
えっ???ですよね。
(もちろん、息を吐く時は、中の空気が外へ出ていくことで、自然と緩んで萎んでいく・・・というような動きはできます。)
肺が、胸郭という籠の中にあるということは、守られると同時に、動きを制限されてもいます。
つまり、肺は、この胸郭の動きによって、籠の中で安全に働いているのです。
だから、背骨や肋骨を滑らかに、柔らかに動かすことができるよう整えていくことが大切。
ヨーガのポーズを練習すると、呼吸がしやすくなると感じるのは、練習をすることで、この胸郭を構成する筋肉などに働きかけて、整えているからなんです。
ポーズは、またいつかご紹介するとして、骨の話を続けますね。
この胸郭は、骨に関しては、12本の肋骨と椎骨(背骨)、1つの胸骨から成っていますが、大まかに上下に分けることができます。
上から真ん中辺までの骨は、前後に。
真ん中辺から12本目の骨は、左右に、筋肉の動きによって動かされます。
上から真ん中辺までの骨の動きは、胸の上にどちらかの手を、ちょうど胸の裏側あたりの背骨に、反対側の手の甲を置いて、感じることができるでしょう。
背中側の手の甲で感じる動きは、胸の上に置いた手のひらが感じる動きより、小さいかもしれませんね。
よければ、胸の上や胸の裏側に手を置いて、ゆっくり呼吸をしながら感じてみてくださいね。
真ん中辺から下に向かって、12本目の骨までの動きは、両手の親指を背中側、残り4本をカラダの前側にして、左右の肋骨をそれぞれの手で挟むように置いて感じることができるでしょう。
胸郭の上部と同じように、前後に膨らんだり緩んだりも感じるでしょうけれど、左右へ広がったり、閉じたりの動きを、より感じられると思います。
この胸郭下部の動きも、よければ同じように、両脇(ウエストより上の、固い骨~肋骨辺り)に手を添えて、ぜひ感じてみてください。
この胸郭下部の動きは、アコーディオンの蛇腹っていうのかな・・・?のような動きと表現される方も多く、私には滑らかなハーモニーを奏でるような、美しい動きだと感じられます。
みなさんはどんなふうに感じられますか?
・呼吸を司るカラダ~筋肉のはなし
さて、肺は基本的にそれ自体で動かず、胸郭~籠~の空間が変化することで、広がったり、萎んだりするお話をしました。
ここからは、その骨たちを動かしている筋肉のお話をしましょう。
呼吸筋群に含まれる筋肉は、実はたくさんあります。
「自然呼吸法の本」(ドナ・ファーリ著 河出書房新社刊)の中では、一次呼吸筋と二次呼吸筋というふうに紹介されています。
今日ご紹介しようとしている筋肉は、一次呼吸筋。横隔膜、肋間筋、腹筋群から成ります。
参考までに二次呼吸筋は、一次呼吸筋より小さかったり、デリケートな筋肉で。重たい頭を支えている首の筋肉や、首から肩、背中に広がる僧帽筋の上部、胸筋などが含まれます。
わたしたちのカラダにとって、呼吸するということがいかに大切かは、このように胴体のたくさんの筋肉を使っていることからも知ることができますね。
・とても大切な呼吸筋~横隔膜
さて、では一次呼吸筋の話を。
先にご紹介したように、呼吸を司る筋肉の中でも、とても大きな役割を担っているのが、横隔膜、肋間筋、腹筋群です。
横隔膜って「膜」って書くのに、筋肉?って感じますよね。
ええ、筋肉なんです。だから、育てることができるんです(←ここ大事)。
この筋肉は、カラダの奥深くにあります。
ざっくり言うと、肋骨の一番下辺りに横に広がっていて、心臓や肺を守っている胸郭と、胃などの消化器官、排泄器官、生殖器官などの内臓がある腹部を分けています。
いのちそのものを営む胸部と、いのちを育む内臓の境目、鳩尾辺りから背中側とカラダの両端へ胴体を横断するように広がっていると言ったらわかりやすいでしょうか・・・?
そのため、横隔膜の上にある内臓と、下にある内臓と協力して、いのちを紡いでいけるように、横隔膜には3つの穴が開いていて、その穴の中を血管や神経、食道が通っています。
ここを通る神経には、自律神経も含まれています。
だから、自律神経のバランスを整えるために、みなさんがよく耳にする腹式呼吸が大切なのですね。
さて、この横隔膜。呼吸によって、どのような動きをするのでしょう?
息を吸うと、横隔膜は縮んで薄くなって、お腹の方へ下がっていきます。
この時、下がってきた横隔膜に内臓が押されて、カラダの前側に押し出されます。その動きが、お腹が膨らんでいくように見えたり、感じたりして、「腹式呼吸」と言われたりします。
腹式呼吸と聞くと、お腹まで呼吸が入っていくように考えますが、実際は内臓の動きでそのように見えるだけ。
実際は横隔膜を働かせているので、「横隔膜呼吸」と言った方が理解しやすいかもしれませんね。
このように、横隔膜が下に向かって縮むので、肺を包んでいる籠~胸郭~の内側の空間は広がります。
そして、その広がった分だけ、肺は伸び伸びと広がることができ、呼吸はより深くなっていきます。
一方、息を吐くと、横隔膜は緩み、元の位置に戻ります。
と同時に、横隔膜が本来の厚さを取り戻し、胸郭の内側に戻っていき、狭くなった空間の中で肺も小さくなって、空気が外に押し出されていきます。
横隔膜は、カラダの深層、かつ腹部の上にあるため、その動きによって内臓はマッサージされます。
そしてこの横隔膜の動きによって、肺の容量が変化するならば、肺から送り出される酸素の量が変化していくので、各器官、細胞が受け取る酸素そして血液や体液の量も変化します。
呼吸一つで、カラダの健やかさも変化しそうですよね。
しかし、この横隔膜は筋肉であるため、普段あまり動かしていないと固くなって、動きにくくなります。
そして、とてもデリケートな筋肉でもあって、ストレス影響を受けやすく、そのために固くなってしまうことがあります。
特に、変化し続けるスピードが速い、忙しい社会に生きているわたしたちは、カラダの感覚が弱まって、アタマで考え、行動しがちで、呼吸は浅く、早くなっています。
つまり、横隔膜を動かして呼吸をする機会が減っているのです。
何回か前に記事にしたように、ため息を吐く~できれば「はぁ~」っと音も出しながらことで、まずは横隔膜の緊張を緩めてあげることが、とても大切になってきます。
もちろん、あくびをしたくなったら、あくびしましょ。あくびも息を吐いていますよね?
ヨーガのポーズを練習する時間がなくても、ヨガウェアに着替えなくても、マットがなくても
呼吸は24時間365日、わたしたちのカラダが行なってくれているもの。
数呼吸でいいから、息を吐いている時は、最後の息がカラダから送り出されるその瞬間まで見送る。
息を吸うときは、これ以上がんばらない。ただ、入ってくる呼吸を、楽に、穏やかに受け取る・・・そんなことから始めてみてくださいね。
そして、呼吸のはなしの次回は、この横隔膜呼吸の練習法をご紹介しましょう。
・横隔膜を助ける筋肉の話~肋間筋と腹筋群
深い呼吸に大切な横隔膜。
横隔膜は、肋骨の下方に横に広がっている筋肉ですが、どちらかというと主に上下運動によって、胸郭を広げたり、元に戻したりする動き。
一方で、この記事の始めの方で、手で触れて感じたような、肋骨を左右や上方向に広げたり、元に戻したりしている筋肉。それが肋間筋です。
これは、文字どおり肋骨と肋骨の間を繋いでいる筋肉で、肋骨の内側と外側にそれぞれ付いています。
肋間筋は、外側に付いているものが、息を吸うときに肋骨を持ち上げ、又、左右に広げてもくれます。
反対に、内側に付いているものは、息を吐くときに働いて、肋骨を元の位置・状態に戻していきます。
この筋肉は面白くて、肋骨と肋骨の間を、クロスしながら外側と内側でそれぞれ繋いでいます。
又、この筋肉は内外各腹斜筋の内側にあります。なので、この筋肉を滑らかに柔らかく、動きやすいように整える時は、外側の腹斜筋から整えてあげましょう。
そして、あと一つだけ、横隔膜を助ける筋肉として、腹直筋のお話をしましょう。
この筋肉は、一般的に腹筋として知られていて、ボディービルダーの方などの6つに割れているあの筋肉です。
日常での呼吸では、特に意識して働かせることは少ない筋肉ですが、横隔膜呼吸などの深い呼吸を練習するときには、しっかり働いてほしい。
深い呼吸をするときは、実は息を吸うことよりも、息を吐くことが大切。
なぜなら、肺から最後の息まで外側に送り出して、新鮮な呼吸を受け取るスペースを開けたいのです。
そのために、深い呼吸~横隔膜呼吸を練習する時は、腹筋を働かせて、お臍をお腹に引き込むようにしながら、お腹を薄くして、横隔膜を上に押し上げることを助けていきます。
このようにして、腹直筋を働かせることは、その奥にある筋肉にも作用して、横隔膜と同様に内臓をマッサージしてくれるので、呼吸だけでなく消化などカラダの営みを促すことに繋がります。
深い呼吸~横隔膜呼吸は、横隔膜はもちろん、この腹直筋を始めとした腹筋群が内臓に働きかけていくので、便秘解消にも効きます。
ということは、肌の調子にも繋がっているので、美容のためにも良さそうですよね。
ただし、いつもお腹を引き込むことは、カラダにストレスをかけすぎ、横隔膜の動きを制限してしまうので、お勧めしません。
引っ込めて緊張させたら、緩ませる。
このバランスが大切ですよ。
呼吸のはなし、次回からは呼吸法のご紹介をしていきましょう。
夏になると、外気の熱やエアコンの効いた室内と外気の温度差などで、自律神経がバランスを崩しやすく、呼吸も浅く早くなりがちです。
今日ご紹介した横隔膜の動きを中心にした呼吸法は、自律神経のバランスを整え、こころを鎮めていきたいときにお勧め。
この横隔膜呼吸について、次回はお話ししましょう。
当Spaceのリラックスヨーガは、「呼吸を感じる」ことを大切にお伝えしています。
一人一人異なる呼吸の早さ、深さに、寄り添うように進めていくセッションは、一人に一つのヨーガという伝統的なヨーガの伝え方で行なっています。
ご自身のいのちを育み、紡いでいる呼吸を、丁寧に感じる中で訪れる穏やかで静かな時間。
他の誰かになる必要もなく、ただ生きている感覚の中で寛いでいく心地よさを、どうぞ体験してみてください。
参考資料:「自然呼吸法の本」ドナ・ファーリ著 河出書房新社
「サイエンス・オブ・ヨガ」アン・スワンソン著 西東社
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