梅雨どきを心地よく暮らす~薬膳とインドの食養生のお話〜
ふと見上げた空に、モクモクと夏雲が見え、夏の暑さを感じるような日々。
日本では、本格的な夏の前に、梅雨がやってきます。
梅の実が熟す頃の長雨。
夏に向けて、梅シロップや梅酒、梅干しなどの梅仕事も楽しい季節ですね。
とはいえ、6月に入って衣替えをしたら、建物や電車など街中は一気に冷房シーズンに突入します。
長雨による湿度の高さや、冷房による冷えによって、カラダは水分を溜め込みやすく、むくみや重だるさ、胃腸の不調を感じる方も多いのでは?
そこで、今日は梅雨どきの食養生として、薬膳のお話と、インドのオイル ギーとお粥の話をしましょう。
薬膳の食養生
梅雨どきにお勧めの食材
薬膳では、梅雨時にカラダを害する要因を「湿邪」と言います。
この湿邪は、字が表すように、湿気が多い状態。
カラダに必要以上に水分を取り込んで、その水分が停滞するため、むくみや手足の重さを感じやすくなります。
そして、停滞する=滞って流れが鈍くなるので、濁りやねばつきを生じたりしやすく、特に下半身に症状が出やすくなると言われています。
具体的な症状として、頭やカラダが重だるい、化膿したり湿疹が出やすくなったり、排便がゆるくなる、尿が出にくい、そして特に女性は冷えも感じやすくなります。
そこで、この時期は次のような食材を摂ることが勧められています。
①カラダに溜まった水分を取り除き、むくみをとる食材
西瓜や冬瓜、胡瓜などの瓜科の食物
小豆・緑豆・空豆・スナップエンドウなどの豆類 もやし
ハト麦・大麦・とうもろこし
アスパラガス・セロリ・独活
浅蜊・海苔・昆布など海産物
②薬味類〜香りがよく、消化を助ける食材
紫蘇 茗荷 パセリ セロリ コリアンダー
紫蘇は、昔から消毒作用があると言われ、お刺身に添えられていることも多いですよね。香りがよく、薬膳では気の巡りをよくし、発汗を促すとも言われています。
一方、セロリはカラダに籠った熱を冷まし、余分な水分を排出すると言われています。セロリも特徴的な香りがあるので、好き嫌いが分かれるかもしれませんが、熱を冷ます性質から、イライラや頭痛を和らげたり、ストレスを感じる時にもおすすめの食材ですよ。
③カラダを温めて汗から発散させるもの
ネギ 生姜
又、梅雨特有のひんやり寒さを感じる時には・・・唐辛子や胡椒、シナモンなどで、お腹を温めてあげるとよいようです。
梅雨の時期は、ジメジメと湿気が多く、ひんやりした日もありますが、建物の中は夏仕様〜エアコンによって空調管理されています。
人工的に一定の温度や湿度に管理された空間に長時間いると、手足や腰に冷えを感じたり、お腹など内臓が冷えて不調を覚えやすくなります。
そんな時は、これら生姜やネギといった薬味を食事に効かせて、カラダの内側から温めて、整えてみましょう。
また、お勧めした食材には、瓜科などが含まれているように、カラダを冷やす作用が強いものがあります。
その場合は、②や③でご紹介した薬味やスパイスなどを使って、その作用を中和するといいですよ。
例えば、この時期、生姜をサッと炒めたら、ワカメも炒めて、小口切りのセロリと小さめに切ったトマトを加えて、昆布出汁などでスープにしたり、冬瓜を使ったスープなどもお勧め。
冷やしてつるんと食べるイメージの素麺や、フォー、お勧め食材にもある はと麦をスープに加えて、よく噛んで食べてみてください。
スープにすると、冷房などで冷えがちな内臓やカラダの内側も温められますし、細い麺やお米で作られた麺は、食欲が落ちがちな梅雨の時季も、喉ごしよく食べやすいですよ。
インドの食養生〜梅雨どきに潤す良質の油脂ギーと豆のお粥
梅雨どきは、カラダは水分を溜めこみ、重さや滞りを感じることが多くなってきますね。
そんなカラダに溜まってくる水分・湿気を外に出すために、瓜科の食物や豆類などを摂りましょうと、前述では中医学の薬膳の食養生についてご紹介しました。
さて一方で、雨の後の蒸し暑さや、外気のジメジメした感触を吹き飛ばしたいとばかりに、冷たいものを口にする機会が増えませんか?
又、さっぱりしたものを食べることが増えて、油分を摂る機会が減ったりしませんか?
「さっぱりしたもの、あっさりしたものが食べたい」と和食中心の食事が増えるのは、日本人のわたしたちのカラダには自然でいいことだなと感じますし、私もこの時期は野菜中心のシンプルな食事が多くなります。
そこに、良質の適度な油分を足してあげると、カラダの内側から潤して、ホルモンバランスも整えやすくなりますよ。
というわけで、この時季の食養生として、インドのお粥を紹介してみようと思っていますが・・・
その前に、インドで古くから使われているオイル「ギー」を紹介しますね。
1.インドのオイル〜ギーのお話
「ギー」という言葉を聞いたことはありますか?
ギーは、インドで古くから食されているオイル。
インドの生命科学アーユルヴェーダでは、「最高の油脂」と言われています。
数年前から、輸入食材店を始めとして、日本でも販売されているので、目にされた方や買ってみた方もいらっしゃるかもしれませんね。
このギー、実はご自宅で、無塩バターで作ることができます。
作り方はシンプルで、無塩バターから水分を蒸発させ、不純物を取り除いていくだけなので、私も家で作って常備しています。
この油脂には、抗酸化作用のあるβカロテン、安全な脂質である飽和脂肪酸、オレイン酸などの必須脂肪酸である不飽和脂肪酸を含み、特に抗酸化作用に期待できるそうです。
又、アーユルヴェーダでは生命力を増加させるとされており、同時に消化力を上げる、疲労や発熱を抑える、デトックス効果などたくさんの効能が伝えられています。
このギーは、軽さと乾燥を特性とするヴァータの性質や、熱と鋭さを特性とするピッタの性質を和らげると言われており、ドライアイや目の疲れに瞼に塗ったり、眠れない時などにおでこに塗ると良いとされています。
私も、PCの画面を見過ぎていると感じる時や、考え事が止まらなかったり、イライラしてるなぁと感じる時などにお世話になっています。
もちろん、いつもの料理に使って、炒めたり、蒸し野菜やパンに添えたり。
ひと息入れる時に、コーヒーやカモミールティー、そして寝る前のホットミルクにも加えたりします。
バターよりも軽やかで、考えすぎて忙しい頭の中も鎮めてくれるので、梅雨どきのぐるぐる巡る思考やもの思いのアンニュイな気分にもいいかもしれませんね。
2.ギーの作り方
【準備するもの】
無塩バター
ステンレス製など焦げにくい鍋
あく取り
厚手のペーパータオルやガーゼ
ざる
煮沸消毒済みの保存用の瓶
【作り方】
1.鍋に無塩バターを入れて、火にかけます。最初は弱めの中火でバターを溶かしていきます。
2.バターが溶けだすと、金色になり、やがてほわほわとクリーム色の泡が表面に現れます。
この泡が生まれたら、弱火にしましょう。
3.表面のクリーム色の泡を丁寧に灰汁取りなどで掬っていきます。
できるだけ鍋をかき混ぜないようにしながら、根気強く掬い続けてくださいね。
4.表面の泡が段々と小さくなり、鍋の中に再び金色が見え始めます。
鍋の縁や底が、チリチリと少し茶色く焦げ始めたら火を止めます。
5.ギーを程よく冷まし、ペーパータオルやガーゼを敷いたザルで漉して、保存瓶に移して保存しましょう。
夏場は溶けやすいので、冷蔵庫での保管して、使うといいですよ。
気温が下がってきたら、室温で保存可能です。
不純物が取り除かれているので、清潔なカトラリーを使っていれば、1年くらい使用できます。
3.インドのお粥の話
インドにもお粥ってあるの?って思いましたか?
あるんです。キチュリやキチャリと呼ばれるのが、そのお粥。
胃腸が疲れている時や、食べ過ぎたなぁと感じている時、デトックスしたいと思った時などに勧められます。
日本のお粥は、白米や玄米などお米100%で作り、塩くらいしか入れないシンプルなものですが、インドのお粥は豆と米、スパイスを使って作ります。
水の量は、体調に応じて調節をしていいし、体調やお好みで、細かく切った野菜やナッツ、レーズンなどを入れるのもお勧めです。
私がよく作るのは、消化によいイエロームングダル(ダルは豆のこと)を使ったもので、体調を整えたい時、デトックスしたい時や、軽い食事にしたい時などに。
又、野菜たっぷりのインドのスパイスカレーやお惣菜と一緒に、ご飯がわりにもしています。
今回は、ベーシックなイエロームングダルのキチュリをご紹介しますね。
前段でご紹介したギーを使うと、消化力も上げてくれるので、ぜひギーを作って、そのギーでお粥も作ってみてください。
4.キチュリの作り方
【材料】(2~3食分)
イエロームングダル カップ1/2
バスマティ米(日本米でも大丈夫) カップ1/2
水 2カップ~3カップ
塩(できれば岩塩) 小さじ1/2くらい~お好みで加減してください
ギー 大さじ1
※ホールスパイス※
マスタードシード 小さじ1/2
クミン 小さじ1/2
※パウダースパイス※
ターメリック 小さじ1/5
【下準備】
イエロームングダルと米は、それぞれ洗う。
イエロームングダルは、30分以上水に浸しておく。
【作り方】
1.鍋にギーを入れ、少し温めてから、マスタードシード、クミンシード、クローブを入れます。
マスタードシードがパチパチと音を立てて軽く弾け、クミンシードが軽く色づくまで、1~2分待ちます。
2.水に浸したイエロームングダルと米を鍋に入れます。水分も一緒に入れて大丈夫。
始めは蓋をせずに中火にかけ、沸騰したら、塩とターメリックパウダーを加えます。
レーズンやナッツを入れるなら、このタイミングで入れてみてください。
それから鍋に、半分蓋をずらして乗せ、弱火にします。
3.豆と米が柔らかくなるまで、時々焦げつかないように底からかき混ぜながら、30分ほど様子を見ながら煮ます。
途中で足りなくなったら、お湯(分量外)を加えてくださいね。
水分量は目安なので、適宜加えたり、減らしたり加減をして、好きな柔らかさに炊きあげてください。
※刻んだ野菜を入れたお粥を作る時は、ホールスパイスの香りを出した後、野菜を炒めてから、豆と米、水を加えてください。
薬膳とインドの生命科学〜アーユルヴェーダをご紹介しながら、梅雨どきを健やかに過ごしていただけそうなヒントをお伝えしてみました。
ご自身の生活に合いそうなものが見つかったら、嬉しいです。
重く沈みがちで、憂鬱な気分になりやすい梅雨ですが、梅の実がたわわに実る恵みの季節でもあります。
紫陽花がしっとり雨に濡れていたり、蛙の声を聞いたり、または梅雨の晴れ間を楽しんだりしながら、健やかに楽しく過ごしてくださいね。
当spaceでは、初めてセッションを受けられる際に、アーユルヴェーダの体質チェックを受けていただけます。
そして、プライベートやセミプライベートセッションでは、この体質チェックを参考に、お一人お一人のカラダやこころの状態を、健やかにバランスよく調整していきます。
又、おうちに帰ってもご自分で整えられるように、必要な方にポーズや呼吸法、食べ物などもご案内しています。
「わたし」のための処方箋のように、当spaceのセッションを楽しんでいただけたら幸いです。